少し前に、慶応大グループが国内初の「子宮移植」臨床研究を申請したとの報道があった。
本書を読むまで、そうした技術があること自体を知らなかった。
生殖をめぐる問題について、日々進展する技術はときに私たちの理解を置き去りにしたまま、
新しい選択肢を示す。
それがあるいは身体的・心理的・経済的に大きな負荷を与えるものであっても、可能性をつなぐと
されるものであるならば、心が揺れることをどうして否定できよう。
街中ですれ違う隣人が、今まさにそうした揺れのなかにいるさなかであるかもしれない。
彼らがどのように悩み、葛藤し、苦しんでいるのか。著者は丁寧にすくいあげ、問題のありかを探る。
問いのかたちが少しでも共有されるために、本書が少しでも広く読まれることを願う。