第165回、直木賞候補作品。
以前に呉さんは、「スワン」でも直木賞候補に、そしてその後第167回直木賞にも「爆弾」が候補作としてノミネートされる。
早く直木賞を獲ってもらいたい作家さんの一人。きっと近々獲ることでしょう。
学生活動家を捕まえたことで「栄光の五人組」と称された幼馴染。
彼らが高校生のときに関わった事件が40年の時を経て、それぞれのバラバラの人生を振り返るとともに明かされていく。
硬質な筆致で語られる物語の深さと謎の解明にどっぷりと浸れる。
こんなハードボイルド全開の小説は昨今読んでいなかったので、面白かった。
ハードボイルド・ミステリーであると同時に、この「おれたちの歌をうたえ」は、タイトルに”歌”とあるとおり音楽が大きく物語に関係する。
ビートルズやクリムゾン、ディープ・パープルなど往年の洋楽ロックから、頭脳警察やゴダイゴなんかの邦楽まで幅広く物語に登場する。
それらの歌の数々が物語の要所要所でストーリーに深みを加える。
普段あまり邦楽を聴くことがないのだが、この小説のおかげでゴダイゴの”イエローセンターライン”を知れたことは嬉しかった。