近年『町中華』というジャンルがにわかにブームになっているとか何とか。
昔ながらの赤いのれんとガラスケースの中の食品サンプル(当然色褪せている)こぢんまりした店内、右手にカウンターと厨房、左手にテーブル席、高い位置にテレビ、店主が中華鍋を振る音。客が食べているのはラーメン、チャーハン、餃子にビール。多少の差異はあれど、大体の人の脳裏に浮かぶ概念はこんな感じかしらと思う。漫画やアニメで見た『中華料理屋のチャーハン』に憧れて、家でチャーハンが出た時にわざわざお椀で小山型に盛り付けたのは小学生の頃だったか。
しかしこの本の中で主に食されているのは所謂中華の定番の外側、オムライスやカツ丼やカレーといった食卓の定番から、日本各地に点在するどこからきていつから食べられているのかはっきりしない局地的中華。確かに壁に貼り出されているメニューにカレーやオムライスといった文字を見たことがある気はするが、なるほど、中華料理屋で中華料理とビール以外の注文をしたことはないかも。
惹かれる町中華あるところへ赴いては腹がはち切れんばかりに同じ料理を食し、色んな店のひと皿が辿ってきた足跡を紐解こうとする。これでもかと美味しそうに描かれた料理の数々とそれを作っているその土地の人たちの興味深い話が掛け合わさった情報量の多さに目が廻る。なのに、料理絵の緻密さからはかけ離れた関節ぐにゃぐにゃ人間とゆるい動物たちのイラストがうまいこと緩衝材になって、息継ぎもさせずまだ見ぬ新たな中華の世界への扉をどんどん開かせる謎のパワー。情報もカロリーも完全にオーバーしてるのに目が離せないそれはもはや中毒に近い。
それにしても、天津飯食べたい!