
“新撰組”と言えばだいたい出てくる名前は、近藤勇、土方歳三、山南敬介、
沖田総司、斎藤一、永倉新八といった面々だと思うのですが、この物語の主人公は、
あまり聞きなれない篠原泰之進なる人物。
この泰之進も他の幕末志士同様、自分なりの志を抱き、新撰組に入隊するのですが、
やがて近藤局長、土方副局長たちとの考え方の違いから袂を分かつことになります。
幕末の動乱の中で新撰組隊士も次々と命を落としていく中で、この泰之進は明治末まで
生き抜くことになります。
泰之進の人間臭さ、そして短い間だけども妻として泰之進の心の支えとなった萩野を
はじめとして、この時代に翻弄されながらも、懸命に生きた人々の力強さに心打たれます。
著者の葉室麟さんは、『蜩ノ記』、『銀獏の賊』など多数の名作を残して昨年暮れに66歳
の若さでこの世を去ってしまいました。もっともっと心打つ作品が生み出されたであろうに、
残念でなりません。
心よりご冥福をお祈りいたします。