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『願わくば海の底で』 額賀澪 (東京創元社)

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富士宮店

『願わくば海の底で』 額賀澪 (東京創元社)

富士宮店・高村のおすすめ



高校生「菅原晋也」という人物を中心に、その周りの人の視点で物語は進んでいく。

彼は人と関わるうえで困難となる悪癖を抱えている。
そして憎めない飄々とした性格をしながらその内に秘めた繊細な部分を、
ともに彼と一緒に過ごしてきた人たちとの時間は、その空間は確かに青春だった。

作者の額賀先生らしい書き味はサラりとした、読みやすい文章にある。
そしてそんな流れていくような中で登場人物の思いを読んだときに感じる
胸のザラつきが心地よく、体に染みていく。

作中に派手な動きはない物語でも、十分に青春を感じられる。
ぜひ読んで体感していただきたい。





最後に、この小説では3.11の震災を扱っている。
あの日から10年以上経っている。
あの日を体験していない、知らない子どもたちも大きくなっていき、また新しい命も日々芽生えているだろう。

この小説を読んでどんな形であれ、あの日のことを伝え続ける必要があると強く思った。
それはあの日にあんなことが起こったのだと「忘れないため」に。どれだけ大事なことか。
そしてそれは思い出にも似たようなものを持っているんだと。それを強く感じた一冊になります。