Javascriptが無効になっているため、正常に表示できない場合があります。

『芙蓉の人 新装版』 新田次郎  (文藝春秋)

login
店員のオススメ

外商部・管理部

『芙蓉の人 新装版』 新田次郎  (文藝春秋)

静岡外商:小澤 のおすすめ



閉山期間中の遭難・救助費用の遭難者負担の是非や、開山中の登山道の混雑などで
この数日話題になっている富士山が舞台です。

1895年(明治28年)10月より、富士山頂で日本で初めて冬期気象観測を
行った野中到・千代子夫妻の実話をもとにした小説です。著者は自身も昭和7年から
12年の間に年に3・4回、富士山頂の富士山観測所に勤務した新田次郎です。

近代に入り、正確な気象予測のために高所での気象観測が重要であると
使命を帯び富士山頂での観測に準備を進める野中到。
その夫を案じ、同行する千代子。
過酷な環境下での観測作業、高山病に苦しめられる描写に圧倒されます。

夏の開山期間中なら一般登山者も登山できる富士山ですが、冬の富士山は
常に氷点下で、人が吹き飛んでしまうほどの強風が吹き荒れ、平地の3分の2の酸素濃度の高所。
防寒設備・装備も現代の性能と比べれば貧弱な明治時代に冬期観測を行おうとしていた
人がいたことに驚き、それに夫婦で取り組んだことにも驚き、深く感銘を受けます。