
毎日暑い。
梅雨らしい時期もほとんど無く、夏が来た。
おそらく本書が梅雨をぶっ飛ばして夏を呼んだのだろう。
だってこんなにも夏の読書に相応しい物語はない。
体力・やる気・連帯感無しの高校生10人がそれぞれが思惑や事情を抱え、
かっぽれ部「清水いなせ組」は「清水みなと祭り」に向かっていくのだが、
登場人物たちの抱える状況をどう消化していくのか?
自分が「楽しむ理由」を他者に仮託していた彼が、
自分の「当たり前」を失い空虚に迷っていた彼が彼女が、
本気で自分が楽しむことで何かが変わる体験をしていく。
それぞれの抱えた思惑や事情が、本気の夏の熱を経て昇華されていくこの爽快感が気持ちいい。
また、お笑い担当か?と思われた顧問だったが、
後半の疾走感の中、「清水いなせ組」面々に聞かせるそのセリフがまた熱い!
本気を出した者にしか味わえない「夏の果実」をきっちりと後進に受け渡したね。
あとこれは余禄ではあるけれど、
静岡県民、もっといえば当然清水区民(なんかしっくりこないが)なら「にやり」とする場面が方々にあり、
このあたりにも地元出身著者の手腕が光る。
静岡おでんや富士宮焼きそばの描写に留まらず、
清水っ子なら伝わるよね!というメッセージが込められているようで、
ちょっとしたシーンや言葉の端々にも練られた配慮を感じて楽しい限りだ。
いやぁ久しぶりに暑くて熱くて「めちゃくちゃ楽しかった」!