中学生のとき、NHKで放送されていた『シャーロック・ホームズの冒険』を楽しみにしていました。
印象に残っているのが主演ジェレミー・ブレットのホームズです。冷静で知的、それでいてどこか危うく、人間味のある名探偵――まさに「本物のホームズ」がそこにいました。
この本は、そんなブレットがどんな思いでホームズを演じ、どんな人生を歩んでいたのかを描いた評伝です。読んでいくうちに、完璧に見えた彼が実は精神的な苦しみを抱えながらも、全力で役と向き合っていたことが伝わってきます。撮影裏話や共演者の証言も多く、ドラマを見ていた頃の記憶が何度も甦ってきます。
ページをめくるたび、「あの頃夢中で観ていたホームズは、こうして生まれていたのか」と胸が熱くなります。単なる俳優の伝記ではなく、ひとりの人間の情熱と葛藤を描いた物語。あの時テレビの前でブレットのホームズに魅せられた人なら、きっと心を揺さぶられる一冊です。