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『シモーヌ・ヴェイユ』  冨原眞弓  (岩波書店)

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『シモーヌ・ヴェイユ』  冨原眞弓  (岩波書店)

ららぽーと磐田店・店長:田中のおすすめ




シモーヌ・ヴェイユ研究の第一人者による、ヴェイユの「思想の伝記」。
単行本(2002年)、岩波人文書セレクション(2012年)を経て、このたび岩波現代文庫として刊行された。
単行本の刊行から20年以上を経た現在において、
いやますヴェイユ思想のアクチュアリティについて指摘する現代文庫版あとがきも必読である。

ヴェイユは、あらゆる種類の党派性をきらった。集団的思考をきらった。
「いっさいの党派性をいとわしく思う、この独特の心性」(7頁)は、
生涯ヴェイユの思考を方向付けていたようだ。

「人間の尊厳の根拠…をおびやかす最大の敵の正体について、
ヴェイユの考えは学生時代からほとんど変わっていない。
思考する個人を呑みこむべく口をあけてまつ最大の陥穽、
それはあらゆる種類の集団である」(273頁)。
集団は、知性の自由な働きを阻害し、個人の思考を濁らせる。
このような心性をもち、34歳で亡くなるまで
「地表に蔓延する不幸」と闘い続けたひとりの哲学者が、
20世紀初頭のヨーロッパでどのように生きたか。

ヴェイユの遺したテクストは「きわめて時事的でありながら、
時代的な制約によって普遍性を奪われることなく」(330頁)
、さまざまな文脈で読まれ続けている。


その生涯と思索の全体像を扱う本書もまた、おそらく読む者の関心によって、
強く訴える箇所は異なってくるように思える。
長く、繰り返し読み続けていくことになりそうだ。