あく-どう【悪童】
いたずらがはなはだしく手に負えない子供。いたずらっ子。
戦時下、戦禍を逃れるために国境近くの小さな町に住むおばあちゃんの家へ疎開することとなった双子の『ぼくら』。
おばあちゃんの育てた若鶏を殺し、食べ物を万引きし、人間を観察するために乞食の真似事をし、司祭を恐喝し……列挙すると、なるほど確かに彼らは『良い子』ではない。もはや『いたずらっ子』なんて可愛いレベルですらないかもしれない。
しかし彼らと渡り合うおばあちゃんもなかなかのやり手なので、双子が色々なことをしても「可哀想……」となりにくいのはある意味助かる。
日記という形で進む彼らの日々を描く筆は淡々としている。惨いこと、顰蹙ものの行い、親切な人のこと、けちな人のこと、が同じ温度で綴られる。
情緒的な表現のない徹底した日常の記録。
そこから滲む『書いていないこと』の雄弁な声。
彼らは悪い子供だろう。
恐ろしいほどまっすぐ現実と対峙し、残酷に世界を生き抜いていく悪童たち。
でも私たちは、彼らが見ず知らずの婦人から髪に受けた愛撫を捨てられないことも知っている。