お互いの抱えた心の傷を少しでも和らげてあげたいと思う少年たちの辿る軌跡の物語。
己の抱える欲望に自戒と自嘲で押しつぶされそうな村瀬と家族への思いに悩む淀井。
ふとしたきっかけで時間を共有するようになった二人は少しづつ互いを知り、
自分たちの痛みをも共有していく。
危うくも、切実なおもいが溢れる作品です。
とはいえ高校生らしいにぎやかで馬鹿馬鹿しくてでもそれが最高に楽しいみたいな場面もあるのですが、
物語を覆う無視できない死の気配が棘のように刺さっていて、読者に絶えず訴えかけてくる。
この死から2人は逃れることはできるのか?
この作品には純文学を感じる。
夏目漱石の作品、「こころ」とか「行人」を読んだ時のようにこの漫画がヒリヒリする痛み、
逃れられない痛みを突きつけてきます。
あまり気軽にはおすすめできないのですが、
この稀有な作品を読んでいただけたらと思うのです。
蛇足ですがカバーを外すと非常にシンプルな装丁が現れます。
南寝先生が目指したものがわかったように思えました。