私が生まれ育った地域は田舎で、畑や田んぼ、川の近くには本書に出てくるような沼もありました。それこそ“里沼”です。
小学生の時には、よく友人とバケツを持ってザリガニ釣りで沼に出かけたものですが、今思えば木々に囲まれたその沼は、昼間なのに薄暗く、本書に出てくるような謂れがあってもおかしくないような雰囲気を醸し出していました。自分達子供だけの秘密の場所、のような特別な場所という感覚もあったからかもしれません。
その沼も現在では埋め立てられてしまい、広い公園の一部となっていますが、私にとっては友人との良き思い出の場所に変わりはありません。
本書は、全国各地に点在する沼に纏わる怪異体験、恐怖譚を集めた異色の怪談集です。
海や川の怪談とはまた一風変わった不気味さを持つ沼の怪談。
秋の夜長に本書でより涼しくなってみてはいかがでしょうか。