『水曜の朝、午前三時』(新潮社版)が絶版。
何度も読み返した大好きな小説だったから、衝撃を受けた。
放っておいてもいつまでも売れていると思っていた、『水曜の朝、午前三時』が店頭から無くなるなんて想像もしなかった。
想像も心配もしていなかったので、実際に店頭から無くなったのかは確認していないが、ある日突然河出書房新社から発売されていたので、当初は「あぁ、素晴らしい小説だから二次文庫か」程度に思っていた。
そうしたら、なんと「もう絶版にはしたくありません」とPOPにあるではないか。
そうか、書店がしっかりしないとこんなに素晴らしい小説までも絶版になってしまうのか・・・。
我々書店の使命は大きい。
そう。
本当に「もう絶版にはしてはいけません」…だ。
ひとまず、復刊してくれた河出書房新社さん。本当にありがとう。
美しい風景描写と季節感に交え、鮮やかに描かれている追憶の日々の光と影。
誰しもが一度や二度、考えたことがあるであろう「もし、あのとき、あの人との人生を選んでいたら・・・」。
あり得た人生を思い描き、現在と照らし合わせて、それでいて後悔するのではなく、それを宝物として歩んでいく。
「何も難しく考える必要はありません。人生は宝探しなのです。そう、楽しめばいいのです」
病の淵にも自分の人生を我が子に伝えようとした、女性翻訳家の狂おしいほどの愛情と正直さと誠実な告白が胸を打つ名作。
2001年の発売後、20代後半だった私はすぐにこの本を読んだ。
そして、当時の感想の最後にこう綴っていた。
「僕はまだ見ぬ自分の子供にいったい何を残してあげられるのだろうか」
あれから15年以上経ち、私にも二人の子供ができた。
そして、改めて想う。
私は、我が子に一体何を残してあげられるのだろうか、と。
そんなことを考えながら、もう何度目だろう・・・、7,8年ぶりに「水曜の朝、午前三時」を読み返して見ようと思う。
もちろん、河出書房新社版を再購入して。