わりとメジャーな言語の中でも、圧倒的読みづらさで他の追随を許さないロシア語。
だからこそ魅力的で、個人的に子どもの頃から気になる言語ナンバー1のロシア語。
私たち書店員や本好きの間で、もっとも馴染みのあるロシア人名といえば『ドストエフスキー』だろうか。
(いやトルストイだ、ゴーゴリだ、チェーホフだという異論はありましょうが)
小学生ぐらいから、書店の文庫の棚でたまに目にはしていたこの作家の名前を、私はだいぶ長いこと『ドエストフスキー』と間違えて読んでいた。
こうやって間違って書いてもぱっと見気づかないぐらいややこしいのだから、読み間違えてもしょうがないと開き直れるぐらいには読みづらいロシアの名前。
彼の代表作「罪と罰」の登場人物などもっと凶悪で、主人公の『ラスコーリニコフ』はまだまだかわいいもの、悪役的ポジションで登場する『スヴィドリガイロフ』など、生半可な気持ちで読み始めた読書家を振るい落とそうとしてるの?と恐れおののく頭に入ってこなさだ。
こんな風に日本語であるカタカナに直されても読みづらく、キリル文字に至ってはアスキーアート以外でお目にかかることすらめったにない。
なのに音にすると耳に妙に残って、どこで聞いたのか、何をした人なのかよくわからないのに名前を知っている。
近くて遠いような異国の名前それ自体が、こうやって1冊の本にできるぐらいに、私たちの中にひそかに何かを残すものがある。
なんだか重く硬く難解なようで、知るとどこか間が抜けていたりとぼけていつつもやっぱり難解、だけど気になるロシアの名前のふしぎな魅力。
学ぼうとか知識を増やそうとか意気込まず、堅苦しさは抜きにして、ねっころがって笑いながら楽しんでみてほしい。