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『神戸・続神戸』 西東三鬼 (新潮社)

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流通通り店

『神戸・続神戸』 西東三鬼 (新潮社)

流通通り店:田雜のおすすめ



昨日、第8回静岡書店大賞の受賞作品が発表されました。
どの部門の作品も、私たち静岡の書店員と図書館司書さんが心からおすすめしたいと思った作品です。
多くのお客様に受賞作を知っていただける様、売り場を盛り上げていきます。
書店でコーナーを見かけましたら、ぜひお手にとってみてください。

さて、静岡書店大賞は児童書名作部門を除き、この一年で発行された新刊が対象になっています。
個人的には新刊をおすすめするのと同時に、「かくれた名作」や「復刊した名作」を紹介して、「こんな作品があったんだ」とお客様を驚かすのも書店員の仕事の醍醐味かと思っております。
そこで今回おすすめしたいのは、1975年に発表され、今年7月に新潮文庫で復活した「神戸・続神戸」です。
時代は第二次世界大戦下、東京から神戸に逃避行した「私」と、
私が住むことになった奇妙なホテルで出会う、謎と魅力に満ちた人々との交流が描かれます。そのホテルでは国籍も職業も異なる人々が、戦争中とは思えないほど、「自由」に生きています。
超個性的な登場人物たちがユーモラスに、時に哀愁をもって描かれるのですが、
そのバランスが絶妙で、読み進むにつれてキャラクターたちの怪しい魅力にとりつかれてしまいます。
また、「グローバル」や「多様性」といった今に繋がるキーワードが盛り込まれている小説だと感じました。国や立場を越えた他者との付き合いは、この物語のようにお互いが自分むきだしの方がかえって分かりあえるのではないでしょうか。

出版社の編集者さんが復刊をしてくれたおかげで、この本に出会うことができたのですが、自分の知らなかった本との出会いに、改めて本の世界の底知れない魅力を感じました。編集者さんたちの思いも含め、本の魅力をひとつでも多くお客様にご紹介していかねばと思っています。