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『海が走るエンドロール』たらちねジョン(秋田書店)

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『海が走るエンドロール』たらちねジョン(秋田書店)

営業本部:野尻のおすすめ

 


『海が走るエンドロール』たらちねジョン(秋田書店)


僕は漫画を読むのが得意ではない。
漫画は大好きなのに、漫画を読むのが尋常じゃないほど遅い。
若い頃に、友達と漫画の貸し借りをしたとき、あっという間に貸した漫画が返ってきて、”ん?面白くなくて途中でやめたのかな?” なんて勘ぐってしまったこともあった。

遅い理由がわかったのは、ある程度いい年齢になってからだったが、その理由は見開き2ページを3回読まないと頭に入らないからだ。
1回目は文章だけ読んで、2回目は画だけ見る。そして3回目に文と画を合わせて読む。
そうしないと、理解できないのだ。
しかも2回目の画が猛烈に遅い。
隅々まで見て、堪能するため本当に遅い。
こうして、1冊の漫画を読み終える頃、脳は疲れ果てているのだ。
小説を読むよりも漫画を読むほうが遅く、疲れる理由はこういったことだったのだ。


さて、この「海が走るエンドロール」は、そういった意味でものすごく読むのに時間を要した。


ストーリーも設定も素晴らしいのだが、とにかく画が素晴らしい。
キラキラとして眩しいくらいの躍動感に溢れた画力に、心のワクワクが止まらなかった。

物語は、夫に先立たれた65歳のうみ子さんという映画好きの女性が、ひょんなことから美大映像化に通う海(カイ)くんという大学生に出会い、その海くんから
「うみ子さんは、映画を作りたい側の人なんじゃないの?」
「今からだって、死ぬ気で映画作ったほうがいいよ」
と言われ、なんとうみ子さんは65歳にして本当に美大入学を果たし、映画作りについて学び始める。
そこに生まれる様々なドラマを描いた作品。

もう、この年金支給など開始の65歳という年齢設定が素晴らしく、そのいくつになってからでも何かをはじめることは遅くない、と本気で思わせてくれることが素敵だ。
場違いじゃないかという思いとはうらはらに、情熱に素直に従ってとまどいながらも行動する勇気に、自分も、という思いに駆られた。

久々にものすごく心に響いた漫画。
あまりに好きで、あちらこちらで人におすすめしている。
幅広い世代の多くの方に読んでもらいたい。