ロシアがウクライナへの軍事侵攻を開始した。「自国を守るために、緩衝地帯に傀儡政権をつくる」。
こうした説明に、疼くような既視感を覚えた方も多いのではないか。
いやおうなしに、かつての満州国を想起させるからだ。
「日本国家は満州国の葬式を出していない。口をぬぐって知らん顔をしている」とは
竹内好の言だが(本書増補版あとがき)、かつて軍事的・経済的要請と「民族協和」という大義が一体となり、
いかなる歪みが重ねられていったのか、本書が存分に教えるところである。
歴史を知り、歴史から学ぶことがいかに難しいか、私たちは今まさに目の当たりにさせられている。
だからこそ、本書をはじめ、私たちに人間の愚かさや醜さや危うさを伝えようとする研究や考察や手記等々は、
何度でも確認し、幾重にも共有されてほしいと思う。