将棋についてはルールを辛うじて知っている程度で、うまく差すことも出来ず観戦する趣味も特別持っていない。
しかし、何故か将棋の本を読む機会は多く、今までに将棋関連の書籍で心に残った本がいくつか有る。
大崎善生さんの『将棋の子』『赦す人』、塩田武士さんの『盤上のアルファ』などだ。
そして今回この『盤上の向日葵』が「将棋」を題材とした小説で、新たに心に深く残る作品に加わった。
さて、『盤上の向日葵』。
なんとも濃厚、重厚、読み応えのある素晴らしい作品であった。
山中で白骨化した遺体と驚くほど高価な将棋の駒が一緒に発見された冒頭からぐいぐいと引き寄せられ、物語は最後の最後までどうなるのか本当にわからない。
東大卒で起業し年商三十億にまで成長させた会社を突如売却し、奨励会を通過せず特例でプロ棋士となったエリート棋士「上条桂介」が、逃れられない運命の見えない糸に少しずつ引きずられていく様があまりにも悲しく切なかった。
「将棋」に魅せられて、命を削りながら息詰まる戦いを繰り広げる男たちの悲しく切ない物語。
一気読み必至の慟哭ミステリーです。