Javascriptが無効になっているため、正常に表示できない場合があります。

『ここはすべての夜明けまえ』  間宮改衣  (早川書房)

login
店員のオススメ

アピタ磐田店

『ここはすべての夜明けまえ』  間宮改衣  (早川書房)

アピタ店・馬淵のおすすめ

 

タイトルに惹かれて手に取って、中を開いて少し躊躇して、
だけど購入したらそのまま帰りの車の中で最後まで読んでしまった。

身体が永遠に老化しなくなる手術を受けた彼女が語る家族のこと。
そこから浮かび上がる、彼女の身に起きていたこと、彼女自身の罪のこと。
ひらがな多めの柔らかな語り口だからこそ、凄惨な過去も終わったこととして流れるようにすぎていく。

1997年生まれの彼女は私と同じ時代を生きて、私はそのうち死ぬけど、
彼女は手術を受けた2022年から101年間生きてこれを書いている。
のを、2024年に生きている私が読んでいる、不思議。

もちろん現実には融合手術は存在しないし彼女も(恐らく)居ないけれど、
この物語はどこかで私の見ている世界と繋がっていると感じる。

大きな力が振る舞う理不尽さや不自由さは物語のなかでも現実でも変わらずに存在し、
ただの小さな個人である彼女や私を苛む。
『じんせいでたったひとつでいいから、わたしはまちがってなかったっておもうことがしたいんです』
彼女が最後のさいごに自分の足で歩いて自分で選び取った道に、間違いはなかったと信じたい。
すべてを間違わずに生きてはゆけないけれど、今まで間違ってしまったことも見つめ続けて、
私にとって正しいと思えるものを自分で選んで生きていきたい。