
キノの旅でおなじみ、時雨沢恵一先生の描くクライムサスペンス。
物語は"男"と"若い警官"2人の電話から始まります。
日本で起きている連続狙撃殺人事件。
警官は事件の詳細を語り、男に推理を聞かせてほしいと求めるのです。
男は己の想像を語り、事件を推理していくのですが、そのまま解決へとは向かわずに…。
手にとって驚きました。
なんと、全て電話の会話のみで物語が展開するのです。一切地の文がありません。カギ括弧の文のみです。
だからこそ実際にその通話を聞いているようなドキドキ感、一緒に真相に迫っていく臨場感があります。
私はお芝居をする機会が多い人間だったのですが、台本を読んでいるようで、
その世界の住人の一人になったような不思議な感覚がしました。
先生がガンマニアらしいのですが、この作品にも多分にその要素が含まれております。
だからこそのリアルな描写、トリックもあります。
何よりも物語の最後。ゾッとします。「これはここに繋がるのか……!!」と。思わず声がこぼれました。
読み終わったあとにもう一度振り返りたくなる作品です。
人間や社会の、醜悪さ・複雑さがしっかり描写されていて、ゆえに残酷な表現も多いですが、
考えさせられる作品です。
最後、あの鳥肌が立つような感覚。これはぜひ味わってもらいたいです。
