
ロングセラー『暇と退屈の倫理学』を読んでいたら
「本来性なき疎外論」という話題が出てきて、
ふむふむなるほど、と思っていたところで
本書『疎外論入門』の刊行を知り、手に取った。
疎外とは、本書が中心的に扱うマルクスにおいては
『自らの作り出したものが自らのものにならず、
逆にそれに支配されてしまうような状況』である。
本書は、人びとを苦しめるこの「疎外」の克服を
展望するために、まずはその概念が歴史的に
どのように議論されてきたかをたどる。
マルクス以前、マルクス、マルクス以後の議論を
丁寧に整理したうえで、それらを踏まえ、
結論では「疎外論の理論的可能性」として、
人びとの生き方、社会のあり方は、どのような姿が
望まれうるかが示される。
人間の可能性に「期待と信頼」(p.266)を
寄せたうえで展開されるその議論は、
とくに強く印象に残った。
疎外論とは、いま現実に起きている苦しみや違和感に
目を背けることなく、そうではない可能性へと
「期待と信頼」をはぐくむための議論であると
捉えることもできるのかもしれない。
かつては盛んに議論された疎外論だが、本書を
きっかけにふたたび注目が集まるとよいと思う。
