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『ゆかいな床井くん』 戸森しるこ (講談社)

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バイヤー(児童書)

『ゆかいな床井くん』 戸森しるこ (講談社)

児童書バイヤー:井澤のおすすめ



小学6年生の何気ない一年間の日常を、主人公の真面目な女の子ミケが語っています。

ミケの隣の席の床井くんは、クラスの人気者で、ユーモアがあり、ちょっと変わっているけど、自分では気づかないみんなの本当の気持ちを気づかせてくれるとっても魅力的な男子です。
本の帯に「こんなクラスメイトがほしいなぁ」というコメントが寄せられているように、私もこんな男子と一緒に仕事ができたらいいなと心から思いました(笑)
読んでいると、床井くんの言動には思わずそのページに付箋をつけてしまったくらい(しかも4か所)心に刺さるものがあります。
普段は真面目なミケが笑ったときに「ミケが笑った。今日はきっといいことがあるな」なんてこんな殺し文句を言ってきたり、「おれ、大人になっても覚えていると思う。今の、この瞬間のこと。」とか言うので、どこか少女漫画的なツボを抑えられたりしてしまいました。
そして、物語の中でもたびたび直面するこの難しい「悪気がないのに傷つけてる」問題。
あるクラスメイトが本人は魅力的だとほめているつもりなのに、相手や周りの人たちはそうは思わない。こういうことって無限にあり、こわいし難しいと床井くんは言います。
自分が見ていない・見えていない部分を床井くんはきちんと見ていて、それを黙っていないで教えてくれていることにミケは気づきます。
だからミケは床井くんのおかげで嫌いだった友達も、別の見方ができたし、また自分が同じ失敗をしないように普段から気をつけていないと、と思うことができました。
この難しい問題は、大人になっても無限にあり、私もその都度失敗し、次は気を付けようの連続の日々だし、周りの人たちだって同じです。
誰も他人の本当の気持ちなんてわかりません。
自分の本当の気持ちも他人はわかってくれません。
でも想像することはできるはずです。
けれど、ほとんどの人が自覚して行動しているつもりなのに、なかなか人って伝わらないものです。だから床井くんの言う通りこわいし、難しい。
大事なのはこういう問題が日常にあることを子供のうちに誰もが「知る必要がある」ということを私はこの本で伝えたくなりました。

進級などこれから新たな学校生活が始まる前に読んでもらいたい1冊です。