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『ちょっと本屋に行ってくる。』藤田雅史

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『ちょっと本屋に行ってくる。』藤田雅史

営業本部:野尻のおすすめ



2024年。
時が経つのは早いなぁと毎年感じるけれど、歳を重ねるごとにそのスピードは増す。
いや、そんなわけはなく、時の流れは毎年同じはずなのだけれども体感速度は歳をとったことで確実に早まった。気がする。
谷島屋の公式HPをリニューアルしてから、年始の店員のおすすめを毎年担当させてもらっているが、つい先日年始のおすすめを挙げたばかりだと思っていたのにもう新年。
そんな気分なのだ。

今年はこの本をおすすめとしてスタートしたい。
藤田雅史さんの『ちょっと本屋に行ってくる。』

僕が本屋になる数年前までは、まだ比較的『ちょっと本屋に行ってくる。』ができた。
それこそ、夜読んでいた小説「十二国記」が面白すぎて止まらなくなり、遅い時間まで開いている近場の書店に「ちょっと本屋に十二国記の続き買いに行ってくる!」などと言って行ったこともある。
もっと小さい頃は近所に小さな小さな本屋があって、小銭握りしめ「ちょっと本屋に週刊少年ジャンプを買いに行ってくる!」と、歩いて行ったりもした。
時代は大きく変化して、今歩いて「ちょっと本屋に行ってくる」ができる人はどれほどいるのだろうか。
これからもその物理的な距離の「ちょっと本屋に行ってくる」はますます難しくなるのかも知れない。
だからこそ我々はお客様から、心理的に「ちょっと本屋に行ってくる。」と思ってもらえるような本屋にしていかなければいけない、と本当に思う。

さてさて、
この本は、本と本屋にまつわる日常を描く脱力エッセイだ。
初っ端の”風呂と本”からいきなり、わかる!!というがエピソード満載。
僕も風呂で本を読むことが大好きで、しかも出版社さんから頂いた大切なゲラを湯船に落としたこともある。
その後、数時間掛けてそのゲラをドライヤーで乾かし、読み切り、感動し、その感想とエピソードをを出版社さんに送ったところ、著者様からドライヤーのイラスト付きのサイン本を頂いたこともある。絶対世界で1冊しか無いぞ。(意味不明の自慢)

その他、”本棚、マイワールド”では、「本棚を見つめることは、自分を見つめることだ」と。
まさにそのとおりで、自分の本棚を見てみると移り変わる自分の興味、趣味がよく分かる。
あの頃好きだった作家、いま好きな作家、今も好きな作家などなど。

そして一番好きな章は、”本が本屋さんででしか買えなかった頃”。
そう、僕も欲しい本を求めて本屋をはしごしたことはそれこそ数え切れないほどある。
ワンタップで本も買えるこの時代に、朝から在庫があるかどうかもわからないのに本屋をめぐる。
1件目で見つからず、更に大きな書店やありそうな書店を思い描いて本屋をめぐる。
やっと目当ての本を見つけた頃には、その過程で出会ってこれも面白そう!!と購入した本で袋はかなりの重さに。
そう、この出会いや重さや目当ての本を求めて本屋をめぐるこの時間は、ワンタップでは買えない。
人によってかも知れないが、これこそ僕にとっては本にまつわるかけがえのない時間。
僕の本棚にある本は、こんな思い出とともに並んでいるのだ。